■2011年9月10日 東京新聞

江戸の技 赤坂を錬る

江戸の技 赤坂を練る 氷川神社 3台目の山車を復元 例大祭でお披露目 17、18両日に巡行

 赤坂氷川神社(港区)で3台目となる、江戸時代から伝わる山車の復元が完了した。15日から始まる例大祭で初披露される。 これまでの2台を上回る高さ8メートルで、同神社によると、この山車が巡行するのは100年ぶりだという。神武天皇の 人形を乗せて赤坂の町を練り歩く。
 「江戸型山車」と呼ばれる三層構造で、城門などをくぐる際、人形や上部が引っ込むからくりがある。 これは、江戸城内に入ることを許されていた山王日枝神社(千代田区)や神田神社(同)の山車と同じ構造だ。
 関東大震災や戦災で江戸型山車のほとんどが姿を消した。氷川神社には山車の部材が少なくとも九台分、現存しているが、 土台や幕板、欄間や人形の腕など、どれも山車の一部分だけ。氏子町会などで設立したNPO法人・赤坂氷川山車保存会が 青梅市の車大工に依頼、これら部材を基に二〇〇七年と〇八年、二台を復元した。
 三台目は、台東区浅草の祭礼用品の老舗、宮本卯之助商店が引き受けた。製造本部長の浅野浩章さん(三八)は、前二台に 比べて少ない部材を基に江戸時代の文献を調べ、約一カ月かけて図面八十枚を作成。実物五分の一の精巧な模型も作って、 職員八人が完成時の姿を共有しながら作業を進めた。
 「現存する山車の多くは分解できない。江戸型は祭りのために組み立て、分解を繰り返しても寸分も狂わない。江戸職人の 腕の良さ、仕事の丁寧さがわかる」と浅野さん。
 神武天皇の人形は、「最後の江戸人形師」と呼ばれた古川長延の作。皇室の御紋「桐」が刺繍された飾り幕は、大正天皇即位を 祝して、山車を所有していた田町三四五町会(当時は「田四五神武会」)が製作したものが、ほぼ完全な状態で残されていた。
 同神社禰宜の恵川義浩さん(三九)は「いずれは、戦災で焼失した宮神輿を復元し、山車とともに江戸時代の祭りを少しでも 再現できれば」と話す。
 「神武天皇」山車は十六日、赤坂駅周辺に展示。十七日午後一時半~同三時と、十八日午前十時~午後一時、神輿などとともに 巡行する。問い合わせは同神社 電03-3583-1935へ。